QDAコンサルティング

アルファ・モス・ジャパンでは、QDAをメインとした官能評価コンサルティングを提供しています。詳細はお問い合わせください。

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Sensory Analysis - QDAワークショップを振り返って

製品に関する官能評価は、その製品が市場で成功するために必要不可欠なものです。製品の官能特徴が市場の戦略に一致したとき、そして消費者の期待を満足させたとき、最も大きな成功を得ることができます。先日東京で開催したセンサリーワークショップでは、官能評価の手法、特にQDA(定量的記述分析)法についてのレクチャーに多くの時間を当てました。 ワークショップの合間、終了後には、手法に関する多くの質問が出ました。それらのほとんどは、QDAに関する代表的な疑問であり、かつ重要な内容でもありました。 そこで、ワークショップの復習とQDA法の理解を深める目的で、一連の質問とそれに対する回答をまとめ、以下に紹介させて頂きます。さらなる詳細についてご関心がございましたら、どうぞお気軽にお問合せください。

CFS コンサルタント Herbert Stone, PhD
2014年2月



Quantitative Descriptive Analysis (QDA)®に関する質問と回答

1. Sensory Analysis(官能評価)とは何ですか ?

Sensory Analysisとは、一般用語であり、製品の官能特性に関して言語で記述を行う様々な手法を意味します。 手法ごとに、評価者の数、評価者の選抜方法、使用する用語、試験手順、データ解析、レポート方法などが異なります。


2. QDAではどのくらいの評価者を使いますか?

ほとんどの記述分析法では、10~12名の評価者を使います。 10名未満は、製品間の統計的有意差を得にくくするために推奨されません。12名より多い場合は、コストやスケジューリングが問題となります。 より多くの人数を用いるからといって、それだけ多くの情報をもたらすということはありません。


3. 評価者には誰を使えばいいですか?

記述分析のための評価者は、試験する製品カテゴリーを日常どのくらい使用しているか、といった使用頻度に応じて募集されます。評価者は、試験に参加する時間、関心がある方で、 かつ製品開発に直接関与していなければ、従業員でも構いません。多くの企業では、近所の住民を利用しています。


4. どのように評価者の適性を見極めますか?

評価者は、偶然(50%)以上の確率で、製品間の違いを検出できる能力に基づいて選抜されます。 製品は、実際の試験品目のいくつかを使うこと、または他から選択することもできます。試験する製品の違いは、代表的な製品の違い(色、香りなど)を表すものとする必要があります。
食品や飲料に関して、選抜試験は連続した3~4セッションで行われます。各セッションは60~90分以内で、3~4日以内に完了します。 もし、時間が問題となる場合は、プロセスを2日で完了させることもできます。通常、30~40ペアの試験数があれば十分です。

パーソナルケアやホームケア製品のような非食品の場合、セッション数は2~3セッション余分にかかるかもしれませんが、それらはラボ環境で行う評価と自宅で製品を使用しながらの評価の組み合わせとなります。 ラボでの試験は、洗濯洗剤のようなホームケア製品であれば、外観、香りや触感(肌感)などの属性に重点が置かれます。 選抜試験における基本的なプロセスは、食品カテゴリーなどと違いはありません。

また選抜試験の間に、製品に関する有用な情報も提供されます。 例えば、どのような特徴が検出されることができるか、評価プロセスにおいてどのように製品を扱うのが最善か、 そして評価すべき製品の量はどのくらいか、などです。一度選抜された評価者は、次の試験で再度選抜試験を受ける必要はありません。


5. どのように用語を作成するのですか?

QDAにおける評価用語は、日常用語で作成されます。つまり、友人との一般会話で使われるような言葉です。
用語の作成は、グループの仕事です。評価者は、製品を手に取り、口にし、感じたことについて日常用語で表現します。 その目的は、見たもの、におったもの、味わったものなどを説明する用語を作成することです。このプロセスは、1日1回、90分間のセッションで、合計5回行われます。非食品については、ラボの外で使用する製品特性を考慮すると、 このセッション数はさらに余分にかかることになります。消費者の言語を用いることは、新しい評価者を揃えるうえで容易になります。

消費者の言語は、嗜好と強い相関をもち、広告において直接適用することができ、そして製品技術と良い関係性があります。 技術的な用語は、消費者に理解されにくく、嗜好データとの相関が認められにくいです。 また専門家の用語は、消費者に対してあまり意味をもちません。

用語の作成に加えて、評価者は製品のスコアリングの練習、そして使用される用語(属性)に関する定義づけを行います。 このスケールに関する説明は、「Sensory Evaluation Practices”, 4th edition, Stone, Bleibaum and Thomas, 2012」でご覧頂くことができます。
評価者の選抜と用語の作成が完了したら、パネルは製品を評価します。


6. どのように製品を評価したらよいですか?

評価プロセスは、単に製品について限定することなく、実際の使用状況に基づく用語を含めることができます。 例えば、ホームケア、パーソナルケア製品などでは、容器の開閉具合、製品の分注具合などです。 これらは、技術者やマーケティングの専門家によって与えられる情報とあわせて評価者の意見に基づいて決定されます。 試験場所は、ラボに限らず、自宅、またはプロジェクトの目的に応じたそれ以外の場所をも選ぶことができます。


7. どのような解析が使用されますか?

各評価者は、各製品に関して複数回(3~4回で十分)試験しスコアをつけます(これで、解析のための約10,000近いデータ値が集まります)。 平均や標準偏差などの基本統計に加えて、分散分析によって製品のスコアに有意な違いがあるかどうか、どの属性が最も異なるか、 そしてどの評価者が多かれ少なかれ識別しているかを評価します。

各評価者が試験を反復することで、一元分散分析を通じて評価者のパフォーマンスに関する直接的な判断材料を得ることができます。 各用語、属性についても同様に行えます。 結果は、一般的なセンサリーマップや以下に示すようなスパイダープロットを用いて表されます。


8. どのようにホームケア、パーソナルケア製品のQDAを行いますか?

トレーニングの間にパネルは評価手法を確立し、毎回の試験でそれに従います。 6製品の試験に、最初は24日くらいかかることもありますが、次の試験からは数日で行うこともできるでしょう。 というのは、相関分析によって、外観や香りの属性間の関係性が明らかになれば、評価プロセスを減らすことが可能となるためです。



図1は、使用前の洗濯洗剤について、選択した属性によるセンサリーマップを示します。 この情報は、使用後(洗濯機から衣類を除いた状態)の洗剤に関する属性と相関性がありました。 つまり、使用前の属性によって使用後も予測できることを明らかにします。 これらの関係が確認されれば、試験のセッション数を減らす、または試験する製品数を増やすことができるようになります。 パーソナルケア製品についても同様のことが言えます。QDAの主な利点は、実際の使用場面において製品情報を得ることができることです。


9. パネルの構築後、実際の試験にはどのくらいのセッション数が必要ですか?

ほとんどの食品や飲料に関しては、6製品の試験で3セッション、10製品の試験で5セッションが要求されます(繰り返し評価を含む)。 ホームケア、パーソナルケア製品に関しては、6製品で10セッション(2.5週間)、 10製品で20セッション(3週間)程度を要します。製品データベースが一度出来上がると、試験時間を20%程度減らすことができます。 前述したパネル構築のためのセッション(4項と5項)と、一度作ったパネルを定期的に用いたセッションは異なるプロセスです。 前者は、選抜試験、用語の作成などを含みますが、後者のオペレーションナルパネルにはそれらを必要としません。


10. まとめ

記述分析は重要な情報源であり、有用な製品情報を得ることができます。 そのために、ある程度のセッションを要しますが、プレ試験を行いその結果を解釈することで、 常に長い評価プロセスに依存することなく、より迅速な評価に変換させることが可能となります。


※本文はDr. Herbert Stoneによるコメントを和訳したものです。


Dr. Herbert Stoneのプロフィール

学歴・職歴

マサチューセッツ大学 食品技術科 学位・修士号取得, カリフォルニア大学デービス校 栄養学科 博士号取得, スタンフォード研究所 委員長(1962-1974); Tragon Corporation (現Curion)社長兼共同創設者(1974-2007); Etel, Inc.社長兼共同創設者(1978-1982)


専門的社会活動

IFT(Institute of Food Technologiests)会長(2004-2005); Journal of Food Science Scientific官能評価と品質セクションの編集者(2004); World of Food Scienceの社長、共同編集者、編集委員(2000-2012), その他IFT特別会員、実行委員等多数


研究功績

150以上の論文・著作
“Sensory Evaluation Practices” 共著 第4版, 2012


受賞

CFS(Certified Food Scientist 2013); IFTフェロー(1984); Phi Tau Sigma(1958); IFSTフェロー(2004); IAFST (2008); Cal Willey IFTサービス賞(2011); David R. Peryam Award(官能評価部門)(2010)


専門会員

American Association for the Advancement of Science(アメリカ科学振興協会); Sigma Xi(北米科学研究学会); American Society for Enology and Viticulture(アメリカブドウ・ワイン学会); American Chemosensory Society; European Chemoreception Research Organization(欧州化学感覚研究学会)


その他の活動

マサチューセッツ大学 食品科学科 顧問委員(1991-現在); カルフォルニア大学デービス校 食品科学科 リーダーシップ委員会会長(2004-現在); センサリーサイエンス奨学基金会長(1993-現在)


Curion QDAとは?

人の感覚は各々異なり、試験する製品も各々異なるのが前提です。

近年の市場における競争や複雑な技術開発によって、 これまでの専門家の評価が消費者の知覚に必ずしも結びつかないシーンが目立つようになりました。Curion QDA (定量的記述分析法)は、以下のような悩みを解決する官能評価手法です。

  • 社内(エキスパート)による評価結果が、消費者の感覚と一致しない。
  • 消費者の嗜好性とのリンクができない。
  • 感覚を表現する属性が分かりづらい。
  • 人の感覚(香り、味、テクスチャー、外観)の定量的な表現ができない。差が出ない。

Curion QDA の重要な要素は、以下の6つです。

  • 選抜されたパネリスト(10~12名)を利用して、同意形成された系統的な流れに沿って行う。
  • 一般的、かつ日常的に使われている用語をラベルとして用いる。
  • 専門的な技術用語や品質を想像させるような用語の使用は、パネリスト間で複数の解釈を起こすことから薦められません。
  • 製品を表現する全ての属性を網羅する。
  • 数値をもたない線尺度を用いて、パネリストの感度を最大限に生かした定量的な評価プロセスをとる。
  • パネルリーダーは参加しない。 反復試験を行い、統計的手法を利用する。

用語の開発は、グループディスカッション

グループ作業として、パネルは製品を説明する全ての属性を消費者ベースの用語で記述し、 さらに解釈を共通なものにするためのディスカッションを行います。通常、食品サンプルであれば、ここで全員から合計70~100の用語が出されます。


定量化は、自らが感じる強さに基づいて線上の好きな位置にマークします。

評価方法に関しても様々なバイアスが除かれるよう考慮されます。 数字をもたない線尺度上に、自らの感覚や印象に基づいて属性ごとの強度を評価します。 これによって、各パネリストは周囲の人のスコアを気にせず自らの応答に従って、線の上にどこでも印をつけることができ、 全員が同じ強度(スコア)を示すような長い期間を要する訓練が不要となります。

Curion QDA では、人々の行動や感覚生理の違いを理解した上で、尺度上に正解の位置を求めず、 パネリストには、3~4回行われる繰り返し評価の中で、一貫性をもつことだけが要求されます。



結果の解釈は、グラフや数字で分かり易く表現。

Curion QDA による結果は、分散分析や多変量解析を利用して、製品の類似性、違いを数値やグラフで表現されます。 そして最大の効果は、日常的な用語に基づいて定量化された値は、商品開発フェーズの終盤における消費者テストによる好み、 購入意欲、使用用途、イメージなどの市場調査データとの関連付けを容易にし、特定製品に関するカテゴリづけ、 商品のもつ独特な特徴、強み、弱みの認識に直接的に貢献することです。


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